同じような毎日だけど、空が毎日違うみたいに、きっと何かが毎日ちがう。そんな日々を、つたない写真と文で、残していきたいなって思ってます。


by aiaiai0617

着信

 見たことのない番号から、5回も着信があった。よっぽどのことだろうと、やっと6回目に電話に出てみた。
 ホームページで以前、交流のあった人からだった。交流といっても、とても不思議な交流。
掲示板上やチャットなんかでの会話は一切なく、その人からのコンタクトはもっぱら「箱メ」と言われるメールアドレスの必要のないメールからだった。私は、この「箱メ」でいきなり連絡をとろうとする人は根本的に信用しないと決めていたので、最初はまったく無視をしていた。でも、その人からの「箱メ」はとても長くてそして、変わっていた。
 無視はしていたけど、読んでいた私は、思わず泣いてしまった。恋人との死別や、自分の身の上にふりかかった様々な不幸。そして、現在は不治の病に冒されていて、病院のモルモットになりつつある。どんどん気力も奪われている・・そんな内容だった。
 単純ですぐに感化される私は、真剣に受け止めてしまったけれど、下手にその人に深く関わっても私には何の力もないことを痛切に感じていたから、結局安易な慰めも励ましもせずに、そのままにしてしまっていた。そのことで、自分を責めたりした。着信_b0046745_212294.jpg
 しばらく、その人からの「箱メ」は途絶えたけれど、少ししてから、再びとどいた。
電話番号が乗っていた。「入院していて、いまなら出れる」ということだった。電話して欲しいってことなんだろうって思った。どうしようか悩んだけれど、その人の言葉を信じるならば、その人は、この世を去ってしまうかもしれない人で、そして誰かに救いを求めていた。その場限りのものでもいいから、誰かと繋がっていたいのだろうと、思った。そこで私が必要なら、私でいいならと、電話してみた。電波は不確かで、声はすぐに途切れた。思ったより覇気がある声で、少し安心した。何を話したかまったく覚えてないけど、とにかく「がんばって」と励ましたような気がする。話せてよかったのかどうか分からなかったけど、なんとなく、自分の役割を果たせたような気になっていた。心から、がんばって欲しいなって思っていた。
 でも、驚いた。オセロチャットのサイトで遊んでいたとき、その人が現れたから。
生死をさまよって、悩んで悩んで気力のない人が、オセロしちゃいけないなんて思わない。でも、驚いた。なんだか、気が抜けた。そして、その人に振り回されてた自分が笑えた。
 その人からの着信だった。知らずに出たら、ハンドルネームをその人はいった。すぐに分かった。「ホームページを新しく作ったから」と言う。箱メをしてくれればいいのに、、と皮肉に思う。適当な返事をしてすぐに電話を切って、その電話番号を着信拒否に設定しなおした。
 真剣に受け止めた私がバカなんだろうと思う。だけど、「あの時は・・」ということもなく、いきなりホームページの話を始める神経が私にはわからない。恥ずかしげもなく、URLを告げる気持ちが分からない。
 ネット上では、どんな物語の主人公にも自分はなれる。とくにホームページという自分のお城では。それはそれで、いいと思う。勝手にしてくれればいい。不幸のてんこ盛りに酔ってるホームページに魅力を感じる人だっているだろうし。だけど、人を巻き込むなら、ある程度は責任持って欲しいなって思う。
 思いもかけない人からの着信で、嫌なことを思い出してしまった。個人的なことだし、吐き出したことはなかったけど。ちょっと、思い出したから、書いてみた。
 

 冷たいと言われても、私は、こんなふうに不幸の押し売りをする人をもう2度と信用しないことに決めた。そういう点では、いい勉強をさせてくれた人だなあって思う。
 
by aiaiai0617 | 2004-10-22 21:03 | つぶやき